18.未来に対する5つの姿勢

未来に対して取りうる姿勢として、以下に示す5つの基本タイプが考えられる。


1.エネルギー、物質にかかわるテクノロジーを使った、環境の<支配>を
強調する姿勢。環境は再構造化され、予測可能なものに変えられる。ここでは
平衡状態が求められるので、その環境に生きる者も進化を停止する。
2.社会構造の、環境への<適応>を強調する姿勢。この姿勢もまた平衡状態に
いたる。そこでは確立性が優勢となり、静的な安全が最大化される。
3.生物モデルに範をとり、循環プロセスを用いて進められる、環境との
<共生>を強調する姿勢。たとえば、太陽エネルギー流から直接エネルギーを
引きだす技術や、人間社会の多くの栄養段階でのエネルギー利用、物質の
リサイクルとバイオテクノロジーの拡大利用、などがここでは強調される。
しかしこの姿勢は、自己創出を強調するが、進化を強調することはない。
4.<環境の拡張>により、適所の拡大の機会を切開き、<進化>していく
ことを強調する姿勢。具体的には、太陽系その他のコロニー化である。
この姿勢では「技術を使って前方へと逃走する」ことが意図される。
5.〈意識の拡張〉により新しい適所を切開き、<進化>していくことを
強調する姿勢。ここでは、情報技術は単にエネルギー・プロセスや生産プロセスの
舵取り役だけでなく、とくにわれわれ個人の経験の多様化を進めるものとして
考えねばならない。それゆえ、学習は多様なかたちで体験される多面的な
現実(リアリティ)との、生きた関係を新たにつくりだしていくことになる。
創造プロセスが、新しい構造を展開しつくりあげていくが、そのために
必要なエネルギーはごくわずかなものですむ。意識の新しいレベルを切開き、
それを経験することは、依然としてわれわれの前に未開拓のまま残されている。
そちらへと駆動しつづけることこそ、この姿勢の目指すところである。


ここに述べた5つの姿勢のうち、はじめのふたつは生命を硬直化に導くものである。
第三の姿勢は、進化はないが、調和し、いきいきとした自己創出を強調している。
第四、第五の姿勢は、一方が物質やエネルギーにかかわる技術をさらに必要とし、
もう一方は情報をより高次のレベルに進化させ、新しいタイプの心を生み出す技術に
移行していくので、一見、相容れないものに見えるかもしれない。しかし、
おそらくは、開放的な文化進化、言換えればわれわれが自身の未来をデザインする際に
創造的可能性を開いておくためには、第三から第五までの姿勢の混合、
さらに言えば共生が望ましい。