17.系統発生と淘汰ダイナミクス

生物門のある造りをそのまま単純に引きのばせば、より大きくて
複雑な生体も生まれる(高次形成)。そのメカニズムは、生物発生原則に
述べられた線型的な繰り返しとだいたい同じようなものだ。
こうした高次形成はしばしば〈袋小路〉(カル・ド・サク)に入りこむ。
思春期は、体の成長との関係で遅れることになる。たとえばオオツノジカの
巨大な重い枝角の発達などは典型だが、こうしたものは結局無用の長物になる。
ゾウは生残ったが、巨大になり過ぎたいとこのマンモスは絶滅した。
系統発生の見地からすれば、ここで進化鎖の開いた先端につけ加えられたのは、
〈成熟した〉生体の特徴である。確立したものが確立したものに
付加されたとも言えるだろう。これは、しばしばみじめな結果を招来する。


淘汰は、生体の形態や機能に対してはあまり作用せず、まずもって
〈長期的進化戦略〉に対して作用する。結局、系統発生の各フェーズで
決定的となるのは、構造ではなく、この系統発生の〈ダイナミクス〉なのだ。


 これは自己淘汰のダイナミクスとも言換えられる。選択されるのは、
開放性を得るための進化戦略とうまく対応するダイナミクスである。
この結論は、伝統的なダーウィニズムやネオ・ダーウィニズムのドグマとは
離反するものにならざるをえない。