16.多層的自己創出

生命世界の多層的、動的連結が示すもっとも重要な側面は、それが
ヒエラルキー・レベルである程度の自治を維持しつつ実現されている
という点だろう。この多層的自己創出は、情報は上へ流れ命令(オーダー)は
下に伝えられるという管理(コントロールヒエラルキーと混同してはならない。


最近まで生命のダイナミクスは完全に誤解されていて、システム理論においては
「生体システム」の概念が管理ヒエラルキーの類似語と受け取られてきた。
生命のシステムにおいては、各自己創出レベルがそれぞれ部分的な自律性を
保ちつつ環境全体と相互作用し、コミュニケートしあっている。


しかも細胞にとっての環境とは、単に隣り合う細胞たちだけでなく、
一個の細胞は化学反応やエネルギー流をとおして全生命圏と結びつき、
さらには放射現象や重力をとおして太陽系とも結びついているのである。
各レベルはそのレベル特有の自己組織化ダイナミクスをもち、環境と
それぞれ独自な関係を結んでいる。