12.過去・現在・未来の展開、統覚作用と予想

新奇性に対する広範な開放性、つまり現在と過去に対する
開放性(統覚作用)とさらには未来に対する開放性(予想)は、
つねに最重要な点である。進化は時間―空間結合をさらに
完成させる方向に進んでいくが、これは自己組織化と
「目的」という観点から、次の3点を挙げて説明できる。


まず第一は、こうすることで驚くほど生命の強度が強められる
ことだ。過去における進化の経験だけでなく、未来に予想される
進化の経験までが、今、この時点に反響してくる。


第二点は、系統発生的に導かれる過去の多様性と未来の開放性が、
事実上無限と言えるほど豊かな生命構造の可能性を流入させ、
現在の生命に深みを与えるということだ。個々の複雑な生命のなかで、
初期にあった未分化の中心核が再び経験され、それが展開していく。
しかしこの展開は線形的なプロセスではない。進化とともに起こる
対称性の破れを、構造が自己組織化するための時空の展開と
理解するなら、時間―空間結合はこうした対称性を回復するように
働くと言える。こうしてのみ〈レ・リジオ〉つまり始源と
結びつきつつ、そこまで遡ることが可能となるのだ。あるいは
逆に言えば、進化が自己組織化する各システムのなかに、
その始源と中心を置くのである。構造化のプロセスにおいて、
進化は原則として開いている。しかし対称性の破れと
時間―空間結合が組み合わされることで、それは四次元時空連続体
における循環プロセスとなるのである。


最後に第三の点は、自らの複雑な生命形態を持つにいたった宇宙は、形態に関するだけでなく、その形態形成ダイナミクスに関しても、徐々に自省的、自己参照的になるということだ。構造形態は、現時点で学習できるが、ダイナミクスの方は時間軸のなかでしか学習できない。